中小建設業の『脱!どんぶり勘定』の補佐役 服部正雄です。
2024年度専門家紹介ネットシェアマガジンに5回目の投稿をさせていただきます。
少しでも購読者の皆様にお役に立てれば幸いです。
今回のタイトルは、与信管理の改善です。
10数年前に大きな引っ掛かりで苦境に立たされた経験のある年商規模10億円位の専門工事会社さんの取組をご紹介します。
①新規の取引には信用調査機関の情報を先ず手に入れます。
決算内容が分る事は大事な事ですが、その他にも会社の沿革や主な取引先等全体像が分る事はメリットです。
又不動産の登記関係が付いておりますので、会社所有の不動産の状況、担保の状況等も分かります。
私の経験では、決算書の粉飾はよく聞く話ですが、登記関係の担保状況は嘘がありません。
従って担保余力の有無や抵当権者の名前等も参考にします。
そして一定の調査機関の点数以下の場合には初取引には必ず半金を着工前に前金で受領する事を条件にされています。
そして、決算内容等の定量的な部分に加えて、社長が必ず取引先に訪問して、代表者やご担当者等に面談して会社の雰囲気等確認します。
上手く取引が始まれば、翌年以降は県庁等で建設業の年度終了届等決算内容を自社で書き写します。(建設業の許可番号から決算内容の閲覧が出来ます)
②既存の取引先の取組は、回収条件通りに入金があるか確認します。
支払通知書等事前に頂ける会社の場合には請求内容と合致しているかを確認、不足の場合には担当者が必ず理由等を聞いて報告するルールです。(回収迄が担当者の仕事です)
支払通知書の発行がない会社の場合には必ず経理が電話をして入金内容の確認を実施しています。
同様に不足の場合には担当者が確認して報告するルールです。
特に入金遅れの工事名と理由が必要です。
中には工事の不具合等自社が問題の場合も有ります。(クレーム工事等社長が知らない事が無いようにします)
③更に手形取引の会社もありますので、万一に備えて倒産防止共済に最大掛金迄加入してあります。(倒産防止共済は万一の場合に掛金の10倍の金額迄、無利子で借入が可能になります)
④そして、既存の先にも場合によっては、費用はかかりますが、売掛債権の保証会社を利用されています。(売掛債権の保証が得られない会社の場合には取引条件の見直しや縮小化を検討されます)
この会社の事例の様に、痛い目に会った経験のある社長は学習能力から自社を守る為に与信管理の重要性を理解されてます。
自分で新規先に足を運んだり、自分に未回収金額を報告させる等担当者任せにしない事も大事な事だと思います。
そして上場ゼネコンがバタバタ倒産した時代を経験した経理マンの私の意見ですが、この社長の取組は素晴らしいと思います。
人出不足倒産等、帝国データバンクの記事等でも、建設業の倒産件数の増加、又不良債権を多額に掴んだ会社等では資金繰りや仕事量の減少等大きく経営環境が悪化する場合もあります。
更にもう一段与信管理充実の為に以下3つの検討をされています。
①与信制度限度額の設定(簡単言うと取引先に応じて上限額を決める等のルールです)公共工事や安全な会社は分かりますので取引拡大はOKですが、
多くは危ないかも知れない会社と言う会社になりますから安心度に応じて上限額の設定が必要です。
又仕事が減ってくると営業的には仕事の確保がしたい気持ちとのあいだで経営判断のブレーキ材料にもなります。
又取引の集中が会社のリスクを更に高める為にも、リスクの分断化で安全な先以外は上限の考え方必要と思います。
②現場での情報や噂なども危険察知ルールです。同業者や同じ下請会社の仲間からも集金が遅れている情報又その会社の監督さん等から賞与も出なかった。
給与も遅配が始まった等アンテナを高く張り巡らせる事。
③大手ゼネコンさんと取引があると、決算の報告等必要です。
重機等の保有状況、他のゼネコン等の取引状況等、書面提出が求められます。
(何の為に大手ゼネコンさんは報告をさせるのか?)を考えて頂ければ、下請先にも目を光らせる必要があります。
特に専門性の高い業種の場合に、工事途中で下請先倒産等の事態は大きく自社の責任やコスト面の負担が生じます。
①100%公共工事の会社以外、リスクの無い商売はありません。
②自社を守る為相手をよく知る事が大事です。
③又自社の財務状況等体力を知る事も大事です。
社長の仕事は大変ですが、リスクについての重要性もご理解が必要です。
特に上記のようなことでお困りの中小建設業経営者の方へ、専門家紹介ネットを通じてお問い合わせやご相談お待ちしております。
【 この記事の専門家 】中小建設業の『脱!どんぶり勘定』の補佐役 服部正雄
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